タイトルなし

飯盛 ナヲ子(いさかい・なをこ)

ナヲ子さんは、バッグにメモとボールペンを持ち歩き、気が向いた時に絵を描かれています。「顔」の絵が多いのですが、文字の時もあります。たくさんの「顔」はひとつとして同じものはなく、似ているようで全部違います。でもどこか癒される顔ばかり。ナヲ子さん自身に似ているようにも感じます。素直な性格で喜怒哀楽がはっきりされています。何か食べると「おいしい♡」と満面の笑みです。イタズラした人には大きな声で注意されます。急に悲しくなって泣き出されることも...それでも、いつもは元気いっぱい、音楽に合わせてお尻をフリフリ踊り出されるお茶目なナヲ子さんです。(文・江副美恵)


「障害者支援施設いとし子の家」で暮らしている飯盛さんと相浦さんはとっても仲良し。

飯盛さんは北棟、相浦さんは南棟と、別の棟に自室を構えている2人だが、「いとし子の家」では日中の主な活動を南棟で行っており、北棟の人もみんな南棟に集まってくるのだ。そんな時、北棟の自分の部屋に戻ることができない飯盛さんは仲の良い相浦さんの部屋のドアをたたく。そんなわけで、いつも相浦さんの部屋に集まっては、2人で絵を描いたりテレビを観たりして静かに楽しく過ごしている。相浦さんの部屋は、インドアな2人にとってかけがえのない居場所であり、特別な行事がない限りは、ほぼ毎日2人でゆったりと平和な時間を過ごす。

2人とも優しい性格だが、飯盛さんはお姉さん気質で正義感が強く、うるさい人や勝手な人がいると「こらっ!!」と注意する場面も見られる。また、食べることが大好きで、ちょっとしたお菓子であっても「美味しい~!」と感動してくれるという。それに比べて、相浦さんはとにかく周りを気遣う姿が良く見られ、職員が少しせき込むだけで、「大丈夫?」とすぐ心配して背中をヨシヨシしてくれるという。

飯盛さんは、自身が持ち歩いている小さなメモ帳やその辺にある紙に、ボールペンやマジックペンを使って創作を行う。目から鼻~口までが一本の線でつながった、一筆書き風の特徴的な顔の絵をよく描いている。また、1日一冊、フリーペーパーを支援者から受け取ることを日課にしている。「本ちょうだい」と言ってフリーペーパーをもらい、気に入ったページを何ページか破いて自身のコレクションにしたり、キレイに折りたたんでごみ箱に捨てたりすることを習慣にしている。 相浦さんも同じように柔和な表情の人をよく描いているが、短い線を重ねて描くことが多い。また、折り紙を折ることも気に入っており、折り紙で、子どもの頃にどこかで作り方を教わったと思われるチューリップやアジサイを作っては、自室の棚に貼りつけていく行為を楽しんでいる。