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田浦 守(たうら・まもる)

守さんは常日頃より表情が優しく、いつも笑顔で過ごされています。毎日、挨拶をすると嬉しそうな表情で手をあげて応えてくれます。性格も優しく、小さい虫がいると逃がしてあげるほど、まさに“ 虫もころさない” ような人。また、食事中はごはん一粒まで食べ終えなければ気がすまないなど、きっちりした一面もあります。
そうした本人の性格は、アート活動でも作品に向き合う姿勢として表れており、毎回キャンバス内にきちんと自分の絵や文字を表現されます。作品をキャンバス内に仕上げていく様は守さんらしく、本人の個性が作品の中に凝縮されています。(文・原田健)


昭和41年(1966年)6月14日生まれ。佐賀県佐賀市在住。

20年以上も前に「社会福祉法人聖母の騎士会障害者支援施設いとし子の家」に入所し、人生の多くの時間を同施設で過ごしている。温厚かつきっちりした性格の人で、窓の外に虫がいたら窓をトントンとたたいて虫を逃がしてやったり、洗濯物のタオルはピンと張って整然と干し、乾いたらスタッフが驚嘆するほどきっちりと畳む。

絵を描くことを比較的好んでおり、施設ではアート班に所属している。

「いとし子の家」では、午前中は本人に合った活動や作業に取り組み、午後は余暇時間の他、ごはんやお風呂などの生活時間を送っている。田浦さんの場合、以前は午前中、上述のようなタオル干し・たたみの作業やアート班として創作活動、散歩などに取り組んでいたが、コロナ禍の影響でそれらの活動が難しいため、最近は施設内で音楽を聴きながらの歩行訓練などを行っている。午後の余暇時間にはテレビを観たり、晴れた日であれば南窓のあるぽかぽか陽気のなかお昼寝したりなど、のんびりと過ごしている。

社会状況の変化もあり、いつも創作活動に取り組めているわけではない。また本人も特別絵が描きたいという感じは身振りではわからないが、少しスタッフ側に余裕があるタイミングにスケッチブックとペンを渡すと、静かに創作活動を始める。カラフルな車の絵を描いたり、抽象的な色面を構成したり、あるいは「ZANBOT3」「DAITAN3」「GUNDAM」など少年時代に好んで観ていたと思われるロボットアニメのタイトルなどをゆったりと書き連ねる。作品は、おおらかなストロークの線と色鉛筆による丁寧な色塗りが総じて特徴的である。