「アンキロ」

溝口 裕仁(みぞぐち・ひろと)

学童保育でのある日。お迎えを待っている時間に、裕仁くん。さっきまで違う遊びをしていたのに、静かに黙々と背中を向けて、何かを制作している模様。
ブロックのコマでした。頭の中に図面が出来ているらしく、部品一つ一つ、色彩も、ビックリするくらい良くできています。コマを作っては、バトルして友人たちとよく遊んでいます。
今回、初めて紙粘土で制作した恐竜さんたちを出品しました。愛嬌のある顔立ちが、とても愛らしいです。着色も、キレイな色を使っていました。平面的なものもよく描いていますが、組み立てたり、作り上げることの方が好きなようです。『立体作品も、色々と挑戦してみよう』と話しています。(文・江口博子)


2009年生まれ。主に画用紙に絵を描いたりスクラッチをしたりしている。最近はレゴブロックを使用した造形にはまっている。

絵には本人が好きなキャラクターやオリジナルキャラクターと思われる生き物の絵を描いたりスクラッチで削ったりしている。レゴを使用した作品もいかにも強そうな見た目をした生き物を作っており、また空間認識能力が優れているためか奥行きもしっかりとれている作品となっていてとても見ごたえがある。

画用紙で絵を描くときは主にクレヨンや色鉛筆を使用しており、筆や絵の具を使用するのは頭を使うからか苦手みたいだ。

家でよく絵を描いていて、カラフル図工室の創設者である江口博子さんの紹介でカラフル図工室に参加することになった。同じ教室に通っている西村明日香さんとはとても仲が良く、彼女がいることで溝口さんの作品制作のモチベーションにもつながっているらしい。今まで家で制作することが多かった分、自分と同じで絵を描くことが好きで同じ意思を持った誰かと同じ空間で作品を制作することが楽しいのだと思う。

作品は早くて30分ほどで1つ完成させる。次の日に続きを作るといった、長時間制作するような作品を作ることはなく、作り始めたその時に制作し終わらないと気が済まないらしい。今まで日を跨いで制作したことはない。

平面作品を得意とする西村さんとは違って溝口さんは造形分野を得意としており、上記で述べたレゴブロックのほかに紙粘土も使用して作品制作をしている。自閉症を抱えているが、実際に会ってみるとそれを感じさせないような小学生らしい言動をしている。性格は大人しい方だが、話したり仲が良くなるととても陽気で明るく接してくれて、可愛らしい一面も持ち合わせている。感情表現にとても素直で、機嫌が悪いときや悲しいときなど見たらすぐわかるらしい。また、何かあったときは正直に話してくれる、言いたいことが言えるタイプである。

年の近い兄が一人いて、兄弟揃って身長は高めである。溝口さんはまだ心は幼く、何か強い口調で注意したりすると泣いてしまう。それゆえに彼の精神面に合わせた課題と解決が必要らしいが、きっとその課題を解決できたときは今後の成長も楽しみになるし自分も頑張ろうといういろんなモチベーションにつながると思う。

勉強は苦手ではないが文系科目はあまり得意じゃない。理数科目は得意。答えが間違っていると深く考えてしまって、センチメンタルになることもしばしばある。答えがわからないときは兄に聞いて解決している。

耳がとてもよく、入ってきた音に敏感で気になって落ち着かないこともあるので騒がしい場所での作業や勉強はあまり向いてないみたい。聴覚は普通の人の倍くらいあると思ってもいいらしい。

カラフル図工室の江口さんは、溝口さんの良さをとてもよく知っており、「彼には造形面でたくさん経験を積んで成長してほしい。レゴブロックで作品を沢山作ったり、まだやったことのないいろいろな材料を試させて制作させ、自分に合ったものを見つけてほしい。」と語っていた。(文・立岡孝子)