「ウゴメケ、サンカク」

fuco:(ふうこ)

ホンの暇潰しにマルを描き始めて4 年。昨年からマル以外のモチーフも描くようになりました。長い長い紙に飽きもせず、日々描き続けます。彼女にとって、マルかサンカクかシカクかは勿論、何色かも実はあまり意味がないようです。ただただ自分のエネルギーを表出するように、順に描いていきます。コミュニケーションとしての言葉は僅かですが、頭に浮かぶ言葉を繰り返し呟く事があります。それらを記して、色や言葉との合作となりました。彼女が感じる世界、見えている世界がアートを通じて、ゆっくりカラフルに表出されつつあります。二十歳になった彼女のマルツナガルは、只今愉快に進行中!!(文・瀬戸口庸子)


2000年生まれ 佐賀県佐賀市開成 在住

fucoさんは高校一年生の時に学校へ行けなくなった。暇で暇でしょうがないfucoさんに対して母親が紙とペンを渡して「丸を描いてみたら」と言ったのが、アート活動を行うようになったきっかけである。fucoさんは美術関係が苦手で具体物が描けなかったが、「丸」は人間などのように複雑な形ではないため、すんなりと描き始めることができた。

なお、最初から「これを作るぞ!」という方向性での創作活動ではなく、あくまでも自閉症の特性を暮らしの中に落とし込むためのものの一つが作品作りというスタンスである。普段の暮らしをより暮らしやすくするための活動が、結果的に作品になっている。

最初は「丸」を描く作品が多かったが、ここ4年ほどは「四角」や「三角」と言った「丸」以外の作品も制作している。また、作品の中には「ありがとう」「しあわせ」と言った言葉が書かれているものがある。これはfucoさんが絵を描いている時に時折発している言葉である。

初めて作品を世に出したのは第一回「がばいアーティストたち」で作ったマグカップ。最初は「ただ丸を描くだけでどれくらいの価値があるのだろうか」と思っていたが、そのマグカップがとても売れたことで「これは喜んでもらえるものなのだな」と思うようになったそうだ。それをきっかけに、Instagramを通じて作品を世に発信していくこととなった。

また、学校に行けなくなった頃に家族と一緒に絵を描くようになった。一緒に描いていると「こうやって気遣っているな」「こうして遊んでいるな」というのが互いに通じ合えるようで、それがfucoさんにとってのコミュニケーションとなった。fucoさんにとっての作品制作とは、自分と他者を繋ぐコミュニケーションであり、それを活かすためにライブペイントで他者と一緒に絵を描くという活動も行っている。普段福祉施設などで「支援される」という立場での関わりが多いが、「一緒に絵を描く」という行為ではその人と対等に関わり合うことができる。

fucoさん自身は障害が重く1人で出歩くことはできない。しかし、作品を通じることで、メッセージを頂いたりするなど世界と関わりを持つことができる。インターネットでは障害者や障害者に関わりのある人だけでなくそうでない人も作品を見てくれるため、fucoさんの世界が「丸」を通じて広がり、世界と繋がっている。(文・佐藤由梨)